飛行場から重い足取りで家路につくと、500m手前のところに赤提灯が見えた。知り合いのやっている立ち飲みで、店の人と目と目が合ったら鬼門である。
建屋にそぐわないちゃんとした板さんがいて、自家製の糠漬け、一から手作りの厚揚げ、御造りも出る。かつて同じ保育園に子どもを送り迎えしていたことはお互いに言わない。保育園というところは、乳幼児を通じて親の素性や人となりが丸裸にされてしまう場なのである。
オーナーは、この辺の人ではない。ちょっとバブルな匂いのする人で、立ち飲みなのに高い日本酒ばかりを集め、冷蔵庫にたくさん仕舞い込んでいる。
一番の自慢は「獺祭(だっさい)」の高級そうなやつで、コレ一杯8000円ネ!とおっしゃる。さすがにそれは開けないが、終電がなくなり夜半も過ぎるとビア樽が空くことは稀ではない。
でも、今日は比較的早めに店を出る。
寝静まった家に帰って冷蔵庫野菜室を開けると、そこにはK-momが山口から持ってきてくださった私の「獺祭」が。「日本酒のワイン」と呼ばれるばかりでなく、文学にもゆかりの深い名の酒である。
そして、母が山口から持ってきた中島の雲丹をどっかの海苔にのせて、好きな本を片手に、静々と杯を傾けはじめる。いつしか獺祭魚となり、言葉の川の中を泳いでいる。
○ ○ ○ ○
というわけで、わざわざクールでお送りいただき、本当にありがとうございます。K26君のご退院おめでとうございます。来月の中旬あたり、山口でお会いしましょう。
セコメントをする